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札幌家庭裁判所 昭和48年(少ハ)1号 決定 1973年3月14日

少年 T・N(昭二八・一・二〇生)

主文

少年を昭和四九年三月二一日まで医療少年院に継続して収容する。

理由

少年は昭和四七年三月二二日、当裁判所において窃盗保護事件(昭和四七年少第五〇七号、同第五二一号)により特別少年院送致決定を受け、同月二三日千歳少年院に収容された。ところが、左前眼房出血、右近視、弱視、網脈絡膜萎縮の疑いにより、同年一一月二一日京都医療少年院に移送された。同医療少年院の診断によると、上記の疾病のうち、左前眼房の出血はすでに停止しており、その他の眼疾病はもはや少年院における医療の対象となりえないことが明らかとなつたが、それと同時に、少年が重篤な慢性腎炎に罹患しており、今後少くとも六か月間の絶対安静加療を要することが認められる。

一方、少年の実母はすでに死亡し、実父は生存しているとはいうものの、すでに再婚していて少年を引取る意思は全くなく、他に、少年の身柄を引取つて上記疾患の治療を委ねることのできる親族もいない。また、少年のこれまでの生活態度にてらしてみても、現在の時点で少年を退院させても、少年が上記疾患の治療に専心する可能性は期待できない。

そこで、少年の収容をさらに継続して、上記疾患の治癒をまつこととし、仮退院後の保護観察期間をも考慮したうえ、少年院法一一条四項を適用して主文のとおり決定する。

(裁判官 水沼宏)

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